第1回 三毛猫先生の「探究活動」日誌

ベーコン先生、デカルト先生、パース先生の3人の力を借りて探究教材づくりに励む日常

第1回 なぜ今、探究活動をやるのか?

皆さん、こんにちは。テラオカ電子です。このブログ(記事)では、私がこれまでに高等学校で行ってきた「探究活動」を「打ち上げ花火」的ですが紹介していきます。この記事の読者は、探究活動に興味のある高校生と、彼ら彼女らを指導する先生を考えています。特に、高校生の皆さんが、「私にもできそう」とか「探究をやってみよう」と思ってもらえることを目指しています。よろしくお願いします。

今回は初回ですので、自己紹介を織り交ぜながら「なぜ今、探究活動をやるのか?」について述べたいと思います。

教科に追加された「探究」

高等学校では、昨年度(2022年度)より新しい学習指導要領が実施されています。特に教科「情報」が大きく変わりましたが(全ての教科の基盤科目として位置づけられました)、「古典探究」、「地理探究」、「理数探究」、「総合的な探究の時間」などの「探究」の教科・科目が新しくできました。この背景には、「これからの時代の新しい能力」をどう定義するかにありました。皆さんは、これからの時代に必要な能力とはどんなものだと思いますか?

「AI」、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」や「バイオテクノロジー」などの進歩によって、今後、人間の仕事が無くなると言われています。新しい仕事も生まれるかもしれませんが、残念ながら、それらは、仕事を失った人の仕事になるとは限りません。新しく生まれる仕事は、高度なスキルが要求されるものだからです。新井紀子氏は、「労働市場は深刻な人手不足に陥っているのに、巷間には失業者や最低賃金の仕事を掛け持ちする人々が溢れている」(『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』)社会になると予測しています。

そのような中で生きていくために、若者が身に付ける必要な能力・資質やスキルについて、『21世紀型スキル(ACT21Sプロジェクト)』、『キー・コンピテンシー(OECD)』や『21世紀型能力(国立教育政策研究所)』などが提言されています。ここでは、これらについて詳しく述べませんが、このような提言を受ける形で、先の『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説』では、

「これからの学校には,急速な社会の変化の中で,一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識できる自己肯定感を育むなど,持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められることを明記した。」

と、書かれました。そして、このような社会で求められる能力・資質やスキルを育成する方法の一つが「探究学習」なのです。

【文部科学省の『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説』はこちらから】

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1407074.htm

私は、高等学校での部活動や「課題研究」(工業高校などの職業高校での探究活動に相当する授業)を、10年以上試行錯誤しながら取り組んでいます。ところで、探究活動は、正解のない問いの答えを見つけるものですが、私の活動も「これが探究活動だ」という「正解」をまだ見つけていません。逆説的になりますが、「探究学習とは何か」は、永遠に探究し続けるものだと考えています。なので、これからご紹介する私の探究活動の事例も「正解」ではありません。しかし、それぞれの事例は、「こうすればうまくいくのではないか」と自分なりに仮説を立てて行ってきました。「鳥も目」でご判断いただき、ご自身の探究活動の参考にして頂ければ幸いです。

次に、私の行っている探究活動のコンセプトを述べます。いきなりですが、今の君たち(生徒)の人生は、100年です。You only live once.(人生は一度きり)ですが、どんな人生が幸福なのでしょうか?皆さんそれぞれの人生の目標や生き方があると思いますが、私の一つの提案として、この問いの「答え」を述べさせてもらえれば、それは、「探究を楽しむ人生が幸福なのではないか」です。

このブログは、探究活動の記事なので、いささか作為的ではありますが、探究活動は、「安心、わくわく、ドキドキ」の情緒的価値と「役に立つ、使える、工夫する」の機能的価値の両方を含んでいると考えています。なので、探究をすることで、楽しく、しかも有意義な人生になると思うからです。ぜひ、私の試行錯誤の連続だった事例を読んでいただいて、「これでもいいんだ」と思っていただいて、楽しんで探究学習に取り組んで欲しいです。ちなみに、私の地元のヒップホップグループは、かつて「青春に期限なんて無い、探究心に歳は関係ない♪」(HOME MADE 家族『少年ハート』)と歌っていました。

【HOME MADE 家族『少年ハート』のYouTube動画はこちらから】

最後に、私の考える探究学習のメリットを述べます。先に、高等学校学習指導要領 解説の「これからの学校には,急速な社会の変化の中で,一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識できる自己肯定感を育むなど,持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められることを明記した。」を紹介しました。私は、「自分のよさや可能性を認識」というところに注目しています。アリストテレス(ギリシャ時代の哲学者)は、『ニコマコス倫理学』の中で、「アレテー(徳:強みや得意なこと)で生きることが幸福である」と述べていますが、これからのVUCAの時代を生きていくには、自分の「よさ(強みや得意なこと)」を見つけることが大切だと考えています。今風に言えば「何者」かになることです。では、それを見つけたり、伸ばしたりするにはどうすればよいのでしょうか?

【「VUCA(ブーカ)」とは】

 「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取ったもので、物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態を指す造語

石川淳先生は、『シェアド・リーダーシップ』の中で、リーダーシップを身につけるには、「自らの持論に関する仮説を構築し(=P)、実行してみて(=D)、その効果を検証し(=C)、持論に問題があれば修正し(=A)、新しい持論を構築する(=P)のである。このようなPDCAを絶えず繰り返すことで、持論はバージョン・アップをし続ける。これがすなわち、持論を豊かにすることである」と述べています。探究活動は、先生の考えている「正解」を見つけることでも、それを覚えることでもありません。探究して得られた「答え」と共に、その活動のプロセス(過程)も重要です。活動のプロセスを通して、持論(自分軸)を鍛えることができます。探究活動を通して、リーダーシップも身につくのではないでしょうか?

【「PDCAサイクル」とは】

Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念

また、国分峰樹氏は、『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』の中で、「専門性の身につけ方は、長い歴史を積み重ねて「型化(かたか)」されています。・・・一度「型」を身につければ、何度でもそれを横展開することができるようになりますので、専門性の身につけ方を知らないというのは、何の武器も持たないまま丸腰で戦場に立っているのと同じ状況です。専門性を身につける方法は、「研究」にヒントがあります。・・・専門性を身につける「型」を知るために、研究のエッセンスを理解することは、大きな意味があります。」と述べています。探究活動を通して、探究(研究)方法を学ぶことは、これから次々と現れるテクノロジーに伴う「専門性」を身につけていく上でも役立つのではないでしょうか?また、そもそも「探究を楽しむ人生」には、探究方法を学ぶ必要がありますからね

これで、「探究学習」の必要性やメリットが分かりました。ぜひ、ご自身の探究活動を楽しみましょう。

ご意見・ご感想等ありましたらコメントください。今回はここまでです。

テラオカ電子 

参考文献:

  • 佐藤浩章:『高校教員のための探究学習入門』
  • フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」:『アリストテレス』,
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【2023/11/11投稿】

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